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【書評】人口と日本経済

【書評】 

人口論の歴史を一冊の新書にスッキリコンパクトにまとめたという意味ではとてもいい本。

第1章は人口論、第3章は長寿化の歴史、第4章は経済というより経済論について。肝心の人口と経済の関係については第2章でデータを示して論じている。

全体的に楽観的な主張が多く、納得できる部分が多かった。

経済成長はイノベーションによってもたらされる

人口減少は大きな問題だが、しかしその一方で、日本経済の「成長」については、「人口減少ペシミズム」が行きすぎている。人口が減っていく日本経済に未来はない、といった議論が盛んになされるが、これは間違っている。先進国の経済成長は、基本的には労働人口ではなく、イノベーションによって生み出されるものだからである。

この本の言いたいことはここに集約されている。この主張には大いに賛同できる。人口や労働人口と経済成長にはあまり相関がないこともしっかり統計データやグラフを使って示されている。経済成長は人口の増加ではなく労働生産性の高まりによってもたらされる。

この本は要するに「人口が減っても経済は成長できる!だからもっとみんな楽観的に行こうぜ!」ということが言いたいのだ。

じゃあ日本の労働生産性はどうなのかというと、2016年のひとり当たりGDP(購買力平価)は世界30位に沈んだ。

世界の1人当たり購買力平価GDP 国別ランキング・推移(IMF) - Global Note

あえてポジティブに言うと、改善の余地はまだまだ残されていて、それだけ日本は経済成長が可能なのだ。

イノベーションは続くか

この本は日本経済について全体的に楽観的な見方をしているが、どうしても一つだけ気になることがある。それは、イノベーションが今後も続くとは限らないのではないかということだ。 

例えば、NVIDAがムーアの法則の終了を宣言した。

「ムーアの法則は終わった」、NVIDIAのCEOが言及 - EE Times Japan

半導体は原子レベルまで微細化してしまったので、これ以上小さく出来ないという単純な物理的限界が来た。

これまでは微細化という持続的なイノベーションが続いてきた。

これが止まってしまったら、半導体に替わる”何か“を生み出す破壊的イノベーションが必要になる。

いつかは量子コンピュータが開発されるだろう。

でもそれは明日かもしれないし、100年後かもしれない。

破壊的イノベーションは不連続に起こるので予測がつかない。もし破壊的イノベーションが起きなかったら日本経済は少子高齢化の痛みに耐えられるのか、ということについても注意しないといけないんじゃないかと思う。